はじめに
海外就職や国際結婚で海外に引越しが決まった時、そして、海外ノマドワーカーとして生活を始めるとき、多くの人が日本の「住民票を抜くべきかどうか」という問題に直面します。
日本にいるときにはあまり気にしなかった税金や年金などの手続きが、海外移住を決めた瞬間から重要な課題となります。
この記事では、住民票を抜くかどうかの判断基準、そしてそれが税金に与える影響について詳しく解説し、海外在住者、海外ノマドワーカーとしてよりスマートに生活を送るための知識をお伝えします。
住民票を抜くべきか?海外ノマドワーカーが考えるべきポイント
住民票を抜くメリット
まず、住民票を抜くことで得られる主なメリットを見てみましょう。
1. 日本の住民税が免除される
日本に住民票を置いたままですと、たとえ海外で生活していたとしても、日本の住民税が課されます。住民票を抜くことで、住民税の支払い義務が免除されるため、大きな節税効果が期待できます。特に長期的に海外で暮らす予定のノマドワーカーにとって、このメリットは大きいでしょう。
2. 国民健康保険からの脱退
住民票を抜くことで、日本の国民健康保険から脱退できます。海外で生活する場合、現地の医療保険に加入することになるため、日本の健康保険に加入していると二重の支払いが発生する可能性があります。住民票を抜いて日本の国民健康保険から脱退すれば、その負担を軽減できます。
3. 年金の支払い停止
住民票を抜くと、日本の年金制度からも一時的に離脱することができます。長期間海外に滞在する場合は、年金の支払いを中断することでキャッシュフローを改善することができます。ただし、これは後述するデメリットも伴うため、慎重な検討が必要です。
住民票を抜くデメリット
一方で、住民票を抜くことにはデメリットもあります。
1. 年金の受給資格に影響が出る可能性
年金の支払いを止めると、将来的に受給資格に影響が出る可能性があります。日本の年金受給資格は、基本的に10年間の納付が必要です。年金の支払いを止めることで、受給資格に達しなくなるリスクもあるため、将来の年金計画を考慮する必要があります。
以前の私は海外フリーランスで収入も不安定だったので、年金を払っていませんでした。現在は日本に住民票をおいていませんが、任意で年金を払っています。
2. マイナンバー制度の制約
住民票を抜くことで、マイナンバーの利用が制限される可能性があります。日本国内での金融取引や、役所への申請時にマイナンバーが必要となることが多いため、住民票を抜いた後に日本国内での手続きが煩雑になる可能性があります。
(令和6年5月より、国外へ転出後もマイナンバーカードを利用することが可能になっています。また、国外転出者向けマイナンバーカードの申請から受領まで海外でできるようです)
3. 日本国内での住所証明が難しくなる
日本国内で住所がなくなるため、クレジットカードの契約や銀行口座の開設、各種行政手続きが難しくなることがあります。特に銀行口座に関しては、住所証明が必要な場合が多いため、事前に対策を考えておく必要があります。
日本の自動車運転免許証を持っている場合や、パスポート、戸籍謄本などで身分証明や住居証明に代用できる手続きもあります。
4. 国民健康保険が使えない
海外転出をして住民票を抜いてしまうと、一番困るのが健康保険がなくなることだと思います。乳児医療証もなくなってしまうので、特に小さなお子さんがいる場合は困ります。日本に一時帰国で病院を受診する際は、国民健康保険がないと全額自費負担になるのでイタい出費です。
5. 手当がもらえない
国や地方自治体からの補助金や助成金、給付金、支援金などの手当は日本在住者に限られているものがほとんどです。受給資格から外れてしまうと様々な手当が受けられなくなってしまいます。手当を受けている場合は、住民票を抜く前に考慮する必要があるでしょう。
住民票を抜かない場合のリスクと対策
税金負担が続く
住民票を抜かずに海外で生活を続ける場合、日本の住民税や国民健康保険料の支払いが求められます。たとえ海外で収入を得ていても、日本に住民票がある限り、日本の住民税や所得税が課せられる可能性があるため、二重課税のリスクがあります。
国際的な租税条約を活用
幸いなことに、日本は多くの国と「租税条約」を結んでおり、二重課税を回避するための取り決めがあります。例えば、日本と移住先の国でどちらに税金を納めるべきかを明確にすることができるため、住民票を抜かない場合でも、条約を活用して税負担を軽減する方法があるかもしれません。
住民票を抜いた場合の税金に関する留意点
海外での納税義務
住民票を抜いた場合、日本では非居住者扱いとなりますが、居住している国での納税義務が発生します。移住先の国の税制を理解し、適切に納税手続きを行う必要があります。また、国によっては日本と異なる税率や課税方法が適用されるため、事前に調査しておくことが重要です。
海外からの収入と日本の税金
たとえ住民票を抜いたとしても、日本国内で得た収入には日本の税金がかかる場合があります。例えば、日本の企業から受け取る給与や、日本国内で得た不動産収入などが該当します。これらの収入に対しては、海外に住んでいても日本の税制が適用されるため、注意が必要です。
フリーランスでも日本での年間所得が20万円以下の場合は確定申告をする必要はないですが、個人事業主や日本に法人として会社がある場合は確定申告が必要になります。
投資収入と日本の課税
住民票を抜いても、日本での投資収入には注意が必要です。例えば、国内の株式や投資信託から得た配当や利益には、日本の課税が行われる場合があります。これを避けるためには、投資の管理方法や移住先の税制を考慮した対策が必要です。
住民票を抜いた後の手続きと注意点
在留届の提出
住民票を抜いた後は、日本大使館や領事館に在留届を提出することが推奨されます。海外に3ヶ月以上滞在する人が対象になります。これにより、緊急時に日本政府から支援を受けることが可能になります。また、在留届を提出しておくことで、移住先での法的な手続きがスムーズになる場合もあります。
帰国時の住民票再登録
海外生活を終えて日本に帰国した際には、再度住民票を登録する必要があります。帰国後14日以内に市区町村役場で手続きを行うことが義務付けられており、再登録を怠ると罰則が科される可能性もあります。
専門家に相談すべき理由
税理士やファイナンシャルプランナーの活用
住民票の扱いや税金に関する問題は非常に複雑です。特に、海外と日本の税制が絡む場合、個人の状況に応じた最適な対策を取るためには、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することが重要です。彼らの知識を活用することで、不要な税金を支払うリスクを避けることができます。
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自分だけでの判断はリスク大
住民票の扱いや税金について、自己判断で進めてしまうと、後々思わぬトラブルや負担が発生することがあります。特に国際的な移住の場合は、税務処理のミスが発覚すると、高額な追徴課税やペナルティが課されることもあるため、初めから専門家の助言を得ることが賢明です。
個々の仕事や婚姻状況、居住国によっても日本に住民票を残したままが良いのかどうかは考える必要があります。地方自治体の役所で転入転出の手続きは即日でできますが、一度海外に出てしまうと次に日本帰国までは変更ができません。住民票の扱いに関しては日本出国前に市役所・区役所の窓口で相談することをお勧めします。
まとめ
海外ノマドワーカーとして海外移住を考える際、住民票を抜くかどうかは重要な問題です。住民票を抜くことで得られるメリットは多いものの、その一方で年金やマイナンバーの制約、住所証明の困難さなどのデメリットも存在します。また、住民票を抜かない場合には、税金負担や二重課税のリスクが伴うため、国際的な租税条約や現地の税制についても十分に理解することが必要です。
最終的には、各自の状況に応じた最適な対策を取るために、専門家や税理士に相談することが強く推奨されます。あなたの海外ノマド生活をより快適でストレスフリーなものにするためには、慎重な準備と適切なアドバイスが欠かせません。専門家のサポートを受けて、最適な選択を行いましょう。これからの海外ノマド生活が、思い描いた通りの自由で充実したものになることを願っています。
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